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‪難病センター研究大会で難病カフェ九州サミットの開催報告をしました‬

熊本市で開催された難病センター研究大会で、九州をはじめ全国で広がりを見せている難病カフェについて発表しました。

 

九州における難病カフェの広がり・ネットワーク形成について ―新たな難病支援の形の提案―と題し、2017年に開催したカフェサミットの開催報告をしました。

当日は、北九州のなんくるカフェからもカフェの報告が行われました。以下、当日の発表要旨を掲載します。


はじめに

 

難病NET.RDing福岡は、①難病に関する知識の普及啓発、②難病患者の就労の促進を主な軸として、2014年より福岡で世界希少・難治性疾患の日の記念イベントや、勉強会や交流会を開催している。
九州には疾患ごと/疾患種別を問わない当事者グループが多く存在するが、2016年ごろよりカフェ形式での交流会(以下、「難病カフェ」とする)が北九州を発端に広がりを見せ、全国各地で開催されるに至っている。その開催手法や背景は異なるものの、既存の患者会が活動に課題を抱える中で、新たな支援の一形態として注目すべきものである。昨年12月には熊本において主催者が意見交換をする「第1回難病カフェ九州サミットin 熊本」も開催された。
本稿では、サミットに触れながら、カフェ広がりの背景、その可能性を探る。

難病カフェとは その普及背景


近年の難病法や障害者差別解消法の施行により、難病者周辺の一応の法的整備はなされた。生活レベルでの課題解決、改善の取り組みにおける、地域の役割はますます重要になっている。しかし、今までその役割を担ってきた既存の患者会は、SNSの普及による対面でのコミュニケーションの希薄化も手伝って、高齢化や人材不足が著しい。また、既存の講演会や交流会では個人間の交流の時間は限られており、地方では開催頻度も多くない。
そのような中で、疾患の括りにとらわれず、就労や結婚、周囲との関係など、生活レベルでの悩みや情報共有ができる場として、各地で患者・家族を対象とした難病カフェが広く展開されている。
 2016年2月に北九州(IBD友の会、ベーチェット病友の会)、3月に長崎市(SLE患者個人開催)、5月に福岡市(RDing福岡)で開催し、その広がりは九州圏内で5県8ヶ所に及んでいる。
難病カフェではコーヒーや飲み物を提供し、当事者であるスタッフが来客者の相談を聴く。来客者同士でも交流することができ、当事者ではない来場者も多い。
難病カフェの厳密な定義は主催者によって異なるが、ピアサポートが受けられる、申し込み不要、誰でもアクセス可能なオープンな場所、疾患種別を超えるというのが共通した条件である。それにプラスして、行政と協働し、難病相談・支援センターや難病患者就職サポーターなどの公的な支援が受けられたり、栄養士や検査技師などの専門的な相談が受けられたりするカフェもある。

難病カフェ九州サミットの開催へ


 2017年までは、各々独自にカフェを開催していた私たち主催者であるが、それぞれの知見を集約し、後に続く人の轍を作ろうと、2017年12月に「第1回難病カフェ九州サミットin熊本」を、5県7団体{Nagasakiの小さな難病カフェ、難病カフェぱれっと(長崎)、kumanan café(熊本)、なんくるカフェ(北九州)、ほっとカフェRDing(福岡市)、難カフェin あゆむ(佐賀)、なんなんカフェ(宮崎・書面参加)}で開催した。
 カフェ開催形式は、毎回5名程度が参加する少人数型と、福岡のように40名弱が参加する大規模型に分類される他、専門家の講義等、毎回テーマを設けて開催するカフェと、場所のみ提供し、参加者の交流を主とするものに分かれる。
 カフェ開催に至った背景は、主催者自身が生活のことを相談する場がなかった、患者会のマンネリを打破しようと思った、法律の対象外の患者の支援をしたかった、気軽に集まれる場が必要だと思った、などと多様であった。しかし、前述のように、既存の支援の形態の限界を感じ、開催に至ったことは共通している。
 意見交換では、行政との協働の実際、参加者人数のコントロールや、カフェの課題、今後のネットワークづくりについて意見が交わされた。


 総じて、従来の事前予約必須型から、申込不要型へと相談の心理的ハードルを低くしたことが、難病カフェ普及の大きな要因であると言える。また、どのカフェも超疾患型の交流であり、多角的な情報交換が可能である。加えて、自身と違う疾患の人と関わることで、疾患は異なっても、生活レベルでの課題(周囲とのコミュニケーション、就労等)は同じなのだと気づいたという参加者の声も多く紹介された。これは、療養の視野を大きく広げる要素である。

カフェ形式の支援の可能性


そもそも難病は、その定義にもあるように希少なものである。患者会を設立するとなると、同病患者を集めるだけでも困難であるし、運営についても一定の知識や経験が求められる。
一方で、カフェは気軽に始めることができる。また、講演会に見られるような情報提供者としての主催者―受動的な参加者といった関係性ではなく、そこで構築される関係はあくまで対等である。
従来の支援形態では、難病者は平日に地域の中心部に出向かなければ難病相談・支援センターやハローワークなどの支援サービスにアクセスできなかった。しかし、土日に開催され、誰でも参加可能なカフェはそれを可能にする。「平日は働ける程度の」潜在的な難病者が、気軽に同じような境遇の仲間と交流したり、就労や法的な支援にアクセスできるようになったりすることは、難病の支援における大きなパラダイムシフトである。
今後九州のように、地域に根差したカフェが各地で開催されることを願い、カフェ運営のノウハウを九州の主催者ネットワークで編纂・公開する予定である。
気軽に立ち寄れる場所で、公的な支援機関へも同時にアクセスでき、かつ幅広い世代の多くの当事者とも交流できるカフェは、より生活に密着した課題解決の場として定着していくだろう。


当日発表した抄録・発表スライドはこちらからもご覧いただけます。

(難病センター研究大会のサイトへ移動します)